THE ART OF CYCLE SPORTS
パリオリンピックがまもなく開幕。およそ130年前の第1回アテネ大会から途切れることなく実施されている競技に、自転車があるのはご存知?
Origin
起源
19世紀に発明された自転車は、目覚ましい進歩を経て、より速く安全になったことでスポーツとしても広く楽しまれるように。競技としての始まりは、パリ郊外のサン・クルー公園で1868年に開催された、約1200メートルの自転車レースだと言われています。
その約30年後に開催された最初の近代オリンピックで公道を走るロードレースが取り入れられ、ヨーロッパでは人気スポーツへと成長。1903年にはツール・ド・フランスがスタートし、プロの世界を中心に発展してきた歴史があります。
Track
トラック
傾斜のついたすり鉢状のトラックを舞台に行われるトラックレースは、チームワークや駆け引きも勝負の分かれ目になるスピード・ゲーム。
ゴール前の熾烈なドラマと駆け引きが見応えのあるスプリント、日本発祥のケイリン、1日に4種類の複合種目を行うオムニアム、2人1組で交代しながらポイント数を競うマディソン、空気抵抗を減らすための戦略とシンクロ走行の追い抜き戦パシュートがあります。ケイリンではなんと、隊列の先頭ランナーは電動アシスト自転車を使用するのだとか。
Road
ロード
マラソンのような長距離種目には、フィニッシュの先着順で勝敗が決まるロードレース、個別にスタートして走行タイムを競うタイムトライアルがあります。エースを勝たせる緻密なプランを練ったり、特殊な自転車やウエアなどを用いて空気抵抗を少なくするといった攻略戦が繰り広げられるロード。
パリ大会ではエッフェル塔の横やセーヌ川にかかるイエナ橋、パリを代表するシャンゼリゼ通りなどを走り抜けるそう!このように一般の道路が使われるため、観戦しながら各地の美しい街並みを堪能できるのも魅力です。
Mountain bike
マウンテンバイク
カリフォルニアのユースたちが楽しんでいたホビーが、1990年代、世界初のマウンテンバイク誕生をうけて瞬く間にスポーツとして確立されていったオフロード競技。谷や岩場といったアップダウンのある野山を駆けていくダイナミックな走行には、フルサスペンションを搭載し、種目別にカスタマイズされた大型バイクを使用します。
とはいえ、過酷な耐久レースには転倒やパンクなどのアクシデントがつきもの。コースサイドに控えるメカニックや補給員との連携からも目が離せない、チーム一丸となって挑む戦いです。
BMX
バイシクル・モトクロス
こちらもルーツはアメリカンキッズ。諸説はあれど、自転車でモトクロスを真似る”ごっこ遊び”が始まりと言われ、小回りのきく軽量自転車が使用されます。
オリンピックで競われるのは、高台から一斉に駆け下りて数々のコーナーや起伏を走破するレーシングと、その競技の合間に生まれたフリースタイル。曲面やスロープを組み合わせ、トリックと呼ばれるジャンプやアクロバティックな技の難易度と独創性を披露するフリースタイルは、競技のみならず、ストリートカルチャーとしても発展を遂げました。
Para-cycling
パラサイクリング
パラサイクリングは、1984年からパラリンピックの正式種目となったチャレンジド・スポーツの一つです。身体や視覚障がいなど、適性とレベルによって分けられたクラスごとに競技が行われ、種目や使用する自転車もクラスによって異なります。
パラサイクリングの魅力は、通常の二輪車に加えて三輪のトライシクル、二人乗りのタンデム、手漕ぎ式のハンドサイクルといった幅広い自転車と、異なるタイプの能力を持った選手たちがそれぞれの特性に合わせて磨き上げたテクニック。一般の自転車競技と同様に、1000分の1秒を争うスピード感あふれるレースと自然環境の影響を受けながらのゲームが展開されます。
What it brings
自転車競技がもたらすもの
自転車競技には他にも、自転車に乗って行う球技や、フィギュアスケートのように演技を競うアーティスティック・サイクリングなど、多くのカテゴリーが存在します。
機材の発達、そしてカルチャーと共に躍進してきたサイクルスポーツと、歴史の始まりから今もなお進化と発展を続けている自転車。それぞれの特性に応じて改良を重ねながら豊かになり、あらゆる可能性を広げている様相を見ると、私たちが日々窮屈に感じていることも実は自分の心が制限していただけ、と思えてきそうです。
「自転車に乗るというシンプルな楽しさに勝るものはない。」という言葉をジョン・F・ケネディが遺したように、私たちはこの誰もが共感できる喜びを、サイクルスポーツのアスリートたちと共有しています。
Text: Sara Um