CULTURE

2024.10.03

Move your heart

毎年10月10日はメンタルヘルスにまつわる世間の意識を高め、偏見をなくし正しい知識を普及することを目的に制定された「世界メンタルヘルスデー」。私たちがなにかと後回しにしたり、無理をさせてしまいがちな心をケアしてあげるタイミングです。

Move your heart

Content

心のためのワーク環境を

ストレスマネジメントに自転車

ポジティブなサイクルへ

ワークタイムにも充足感を

すべては良いことのために

心のためのワーク環境を

メンタルヘルスとは心の健康状態を指し、気分が軽く穏やかで、意欲的な状態がヘルシーな心のサイン。日常生活で気分の落ち込みやストレスを感じることはとても自然なことだけれど、長引いてしまうと心の不調に繋がりやすく、さらに外から見えづらい心の問題は自分でも伝えにくいため、回復が遅れることも。

今年の公式テーマ”It is Time to Prioritize Mental Health in the Workplace” (職場でのメンタルヘルスを優先すべき時が来た)をきっかけにワーク環境を見つめ直すことができたら、身体のみならず心の健康にも役立つサイクリングについても考えてみましょう。

ストレスマネジメントに自転車

起きている時間の大半を仕事に費やす働く大人たちの理想は、仕事が生計や人生の目的に喜びをもたらしてくれること。しかし実情はその反対に、仕事が過度なストレスや精神的な負担を生んでいることもしばしば。

「幸せホルモン」として知られるセロトニンは不足すると過食や不眠、慢性的なストレスや疲労感、うつ症状を引き起こしやすくなることが分かっており、メンタルヘルスにおいてとても重要な役割を担っています。そしてそのセロトニンを増やす方法の一つがサイクリングです。自転車のリズミカルな動きはセロトニン神経を刺激し、覚醒状態を高め、心身のバランスを整えるのに効果的なのだそう。

安心感や幸福感をもたらすセロトニンは精神を安定させ、自律神経の調節機能やストレス耐性を高めたり、感情をコントロールし易くする働きをしてくれるなど、良いことずくめ。ひいては顔の表情筋にまで影響を与え、美容やアンチエイジングにも効くとのこと。健康の手がかりとなるセロトニンは、サイクリングで手に入れることができるのです。

ポジティブなサイクルへ

セロトニンと並ぶ「三大幸せホルモン」の一つ、ドーパミンもサイクリングを始めとする有酸素運動によって分泌されやすくなると言われています。この幸せな物質によって脳の働きが活性化すると仕事や勉強などへの意欲を高めてくれる一方で、ドーパミンの機能が低下してしまうとやる気や喜びの消失を引き起こす原因になり得るのだとか。

生きることに向き合っているからこそ、不安や悲しみで気分が落ち込み、エネルギーと活動が低下する“負のスパイラル”に陥る可能性を誰もが持っています。感情を表現することは本来人間に備わったギフトであり良いものであるにもかかわらず、この悪循環の中ではまるで壊れた信号のように機能してしまうのです。そのような時はますます気分が落ち込むサイクルが続きがちですが、実は意図的に行動を変えることでこの流れは変えることができます。

そのカギを握るのは、達成感を与えてくれる行動と喜びを与えてくれる活動。例えばそれは、ワークプレイスにおいてはデスクの観葉植物の成長を見守ることや、近隣のお店の開拓、あるいは一杯のコーヒーを淹れるというごくシンプルなことかもしれません。通勤に自転車を取り入れることもまたスモール・チェンジに最適です。漕ぎ出しは少しだけ力が要るけれど気がつくと車輪が自然と前に進んでいくように、心のサイクルも小さな一歩から好転していくはず。

ワークタイムにも充足感を

軽すぎず重すぎない適度な負荷で、無理なく続けることができるサイクリングは達成感を得やすく、朝日を浴びながら季節を肌で感じ、五感を刺激される独特な感覚は、自転車でしか得られない喜びとも言えます。距離の調整がしやすく、始めやすいのも自転車の利点。

最寄駅よりも先のお気に入りのベーカリーまでという乗り方から、たまに自宅を離れてリモートワークをしに出かけたり、通勤だけでなくブレイクタイムや取引先までの移動など自由に取り入れることができます。タスクと同様にゲーミフィケーション化してしまうのも一つ。天候によって左右されてしまうことは避けられないけれど、同じことの繰り返しになりがちな移動時間にメリハリがつけられる側面もあります。

自転車通勤をすると余計に体力を使って疲れてしまうのでは、と何となく敬遠しそうにもなりますが、実は疲労感よりもむしろ爽快感を感じるとさえ言われており、理由はスピード感や走行中に受ける風によって身体が冷やされるためなのだとか。実際に自転車通勤による心理状態の変化を比較した実験では、疲労感の低下、仕事効率の向上という結果が出ているそう。さらに心理データを用いた検証によると、自転車通勤した日は出社時にやる気が高まり、帰宅時にはリラックスできる傾向があることが明らかになっています。

すべては良いことのために

うつ症状や不安などのメンタルヘルスを巡る問題は職場での生産性や業績に影響するばかりか、WHOの推定によると年間1兆ドルの経済損失が発生すると言われ、仕事環境でのメンタルヘルスを重視することは社会全体的にも有益であることが示されています。私たち自身にも地球にもやさしい自転車は、満員電車でのポジション争いからの脱出シューターとなる期待を超えて、毎日を軽快に、人生を豊かにしてくれるパートナーにもなり得るのです。

サイクリングは心地よさを大切にしながら、トレーニングとは違ったモチベーションで実践することができます。そして最も大切なのは距離や時間、期間といった数的な目標にこだわらず、ペダルを漕いでいる瞬間そのものを楽しむこと。

そうして仕事のために費やす時間がポジティブなものへと変わっていくとき、気づけなかった本心や渇望、感謝と喜びを発見できるかもしれません。

 

 

Text: Sara Um

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ストレスマネジメントに自転車

ポジティブなサイクルへ

ワークタイムにも充足感を

すべては良いことのために

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