CULTURE

2025.10.09

Move Mind Mood

世界メンタルヘルスデーに考える、“心にいい移動”のかたち。

Move Mind Mood

Content

心にいい乗りもの

リセット&スイッチ

フォーカス

自然とのふれあい

つながり

ウェルビーイング

心にいい乗りもの

ストレスや不安を抱えやすい今、私たち一人一人が自分自身の心をケアすることはもはや特別なことではなく、日常の大切な習慣。その一つとして注目されているのが自転車です。世界中で「こころの健康」について考えるこの日に、自転車というシンプルな乗りものへ、新しい視点を向けてみましょう。

リセット&スイッチ

自転車にはストレスを軽減し、心をリセットする効果があります。欧米のとある調査では、自転車通勤をする人の75%以上が「出勤前に気分がすっきりする」と回答したデータが。軽い有酸素運動は、ストレスレベルを下げて気分の安定や前向きな感情をもたらし、心拍数と呼吸が整うことでリラックスを促します。さらにペダルを踏む動作には、実際に「気持ちを前へ動かす」心理的スイッチ効果が。朝の10分間でも、一日の始まりに自転車を漕ぐことは、体と心をやさしくリセットできる時間になります。

フォーカス

自転車での移動は、気軽かつ継続して取り入れられるデジタルデトックス。新しい発想や問題解決のヒントが生まれやすい時間とも言われ、ペダリングのような軽い運動を取り入れた後では、創造的思考が平均60%向上することが報告されています。「考える」よりも「感じる」モードのやわらかい脳が集中力を、自転車の単調なリズム運動と外的刺激のバランスが思考の整理を助けてくれます。それは多忙な現代人にフィットする、メディテーションできる移動方法。運動後に感じる心地よい高揚感と、小さな達成感は自己効力感をも高めます。

自然とのふれあい

自然の中で行うエクササイズが心と体に良い影響を与えるという事実はイメージしやすいものですが、驚くべきは5分間の軽い運動だけでもメンタルヘルスに大きな効果と即効性が得られるということ。この「グリーン・エクササイズ」は国立公園のような大自然や汗をかくハードな運動でなくても、緑の中で身体を動かすことにより幸福感が高まることが確認されています。川沿いや街路樹のある歩道、都心の公園、緑化された広場など、小さな自然を自転車で走ることは、日常的に気持ちを軽くし、心のバランスを整える近道です。

つながり

メンタルヘルスを保つうえで欠かせないのが、人とのつながり。孤独は現代のメンタルヘルス課題の一つです。日本では約4人に1人が孤独を感じているという調査結果もあるように、リモートワークや都市化の進行によって予期せぬ出会いや対面での交流が減るなか、自転車というオープンな移動手段が人と人をゆるやかにつなぐ可能性を秘めています。駐輪場での会釈やライド中の目線の共有だけでも、私たちの脳は「社会的なつながりを持っている」と認識し、その安心感はうつや不安を和らげることが分かっています。

ウェルビーイング

自転車は、個人のこころの健康だけでなく、都市全体のメンタルウェルビーイングにも影響を与えます。自転車を中心にした都市づくりが進むデンマークでは、人が安心して移動できる街は「幸福度の高い社会」を支えている要素。交通渋滞や騒音、空気の質の改善だけでなく、自転車専用レーンや小さな休憩スペースが増えることにより、地域の安全性やコミュニティ意識が自然に育っています。自転車が増えることは、同時に“やさしい都市”を増やすことでもあるのです。

 

自転車は、誰もが手にできるセルフケアの一つです。特別な準備も、長時間の運動も必要ありません。「運動するために時間をつくる」より、「移動の中で心を整える」。そのペダルのひと踏みが、健康な心へのたしかな一歩になるはずです。

 

 

Text: Sara Um

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心にいい乗りもの

リセット&スイッチ

フォーカス

自然とのふれあい

つながり

ウェルビーイング

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