Eyes on Copenhagen (2)
コペンハーゲンと聞いて思い浮かべるのは、先進的なカルチャーに、おしゃれな北欧の街並みをシックな装いで歩く人々?そんな落ち着いたイメージとは打って変わって、大晦日の夜は様子が違うみたい。デンマーク流ニューイヤー・セレブレーションを知って、2023年を締めくくろう。
コペンハーゲン・年越しの流儀
デンマーク人にとって一年で最も大きなお祝い行事であるクリスマスが過ぎて、みんなが次に楽しみにしているのが、来たる12月31日のニューイヤーズ・イブ。この日は祝日ではないため、ほとんどの人は仕事を早めに切り上げてしっかりと備える模様。クリスマスを家族とゆっくり静かに過ごす代わりに、年越しは恋人や友人たちとワイワイ楽しみます。
Photo-on-the-top by Scandinavian Kitchen
パーティーは午後6時から。女王のスピーチ
毎年、大晦日の午後6時が近づくとテレビの前に集まるデンマーク人。暗黙の了解のようにテレビをつけると、そこに映るのはマルグレーテ女王。
そう、集まったのは大晦日の大定番である女王のスピーチを聞くため。国の情勢についてや国民に対する励まし、新年への希望などを演説する約10分の生放送を、多くのデンマーク人がテレビに顔を向けて真剣に聞き入ります。ポジティブで女王の人柄あふれるメッセージが、最高視聴率を誇る人気プログラムなのです。
スピーチが行われるアマリエンボー宮殿
全国民の注目の的である女王のスピーチをスターターに、パーティーはディナータイムへ。
ハイカロリーなクリスマスの食事とは対照的なボイルした魚料理などのメインに、必ず登場するのはKransekage(クランセケーエ)という名のお祝いケーキ。白いアイシングやデンマーク国旗で飾られたリングケーキがテーブルの主役になります。
ディナーでは女王のスピーチで語られたトピックについて議論したり、それぞれおしゃべりを楽しみながら賑やかに食事を楽しみます。
新年へジャンプ!カウントダウン
そして夜も深くなった午後11:40には、この日2つめの人気番組が。
特別番組を囲むように見る彼らの伝統にどこか親近感を覚えますが、こちらは「Dinner for One」(副題: The 90th Birthday)というタイトルの白黒寸劇。イギリスの作家によって書かれた18分間の短編劇で、孤独な女性ミス・ソフィーと執事のジェームズが”友人たち”と大晦日の食事を楽しむ様子が描かれたドタバタコメディです。実はヨーロッパ圏、他の北欧諸国などでも年末の風物詩とされていて、デンマークでは1980年のオンエア以来、毎年欠かせないお決まりのショーとなっています。
Image by Hygge Life
番組が終わり時計の針が真夜中に近づくと、いよいよカウントダウンの合図。
屋内にいる人たちは急いで部屋の中で最も高い場所、ソファや椅子の上に移動して、日付が変わるともにジャンプして飛び降ります。文字通り新年に”飛び込む”というアクションには、この年に待ち構えているあらゆる困難や苦難を打ち破るという意味が込められています。
花火を打ち上げよう
ニューヨークでタイムズスクエアに紙吹雪が舞い、パリの凱旋門がプロジェクションマッピングで輝くように、コペンハーゲンでは、花火が夜空を照らします。しかし少し風変わりなのは、鑑賞するだけでなくそれぞれが自前の花火を持ってくること!
何千人もの市民がメインスポットである市庁舎広場に繰り出し、持ち込みの花火パーティーを開催します。その盛り上がりようは12時の鐘の音がかき消されるほどで、元旦には必ず花火による負傷者がニュースになるとか。
目立つことを好まずシャイで大人しい性格が多いと言われるデンマーク人が、この日ばかりは花火対策の安全ゴーグルやファニーなパーティー帽に身を包んで街を行き交う。こんなシーンは、とても新鮮に映るかも。
ニューイヤーのコペンハーゲン市庁舎広場
そして日常へ
夜通し華やかなパーティを楽しみ、リスキーなほどに花火をあげて盛大に新年を祝うデンマーク人。元旦の過ごし方はというと、ちょっとだけ「寝正月」を味わって、翌日2日には何事もなかったかのように普段の生活に戻るそう。いつも静かに微笑んでいる彼らがこんな風にハメを外す日があるなんて、ちょっとした秘密を覗いた気分。
私たちも今年の一年を振り返って大いに感謝しつつ、大胆に2024年へ飛び込もう。
Text: Sara Um