CULTURE

2025.04.12

Denmark, A Cultural Powerhouse #12

世界で最も幸せな国と言われるデンマークで大切にされる、”人と人“の文化。

Denmark, A Cultural Powerhouse #12

Content

Wellness can be made
幸せな人生の秘訣

Connection is a verb
つながることは動くこと

Strangers Become Neighbors
他人から隣人へ

Togetherness
誰かがいる幸せ

Wellness can be made
幸せな人生の秘訣

長年デンマークが上位に名を挙げる「世界幸福度ランキング」は人生の満足度を聞く世論調査をベースとした、いわば国民たちの自己評価。

“幸せに暮らす市民たち”が自分の人生を高く評価する理由は、美しい景観や充実した福祉制度だけではありません。デンマーク人が大切にしているヒュッゲは彼らの幸福感の土台であり、また、幸せそのものです。

ヒュッゲとは、充実した人生を送るための価値観のこと。このコンセプトは文化の根幹であり、たとえば誰かと過ごす温かな時間、心地よい空気感、そしてつながりから生まれる安心を意味します。

彼らの対話の文化にも、話し、聞きあい、共に時間を分かち合うことを楽しむ様子が窺えます。このような言葉の往復、人と人の間に流れる空気感はヒュッゲに欠かせないものであり、何気ない小さな幸せと安心できる居場所とを感じ取れる時間でもあるのです。

人とのつながりとそこから生まれる居心地の良さ。ここに満ち足りた人生のヒントがあるのかもしれません。

Image: Folkehuset Absalon

Connection is a verb
つながることは動くこと

新年度は、始まりの期待感と不慣れな環境に少しの緊張感が同居するような、なんとも言えぬ空気感を味わえる特別なタイミング。引越しや進級、新天地を意識するときには期待に胸がふくらむ一方、誰とどんな風に関わっていけばよいのか、新しい人間関係に戸惑うこともあるはず。

ヒュッゲという幸せを体現するデンマークでは、家と職場だけではなく「もう一つの居場所」を持つことが生活の一部として定着しています。スポーツクラブや趣味の集まり、小さな地域コミュニティもその一つ。そこには義務や重さはなく、ただ誰かと関わること、そして人と関わりながら、自分らしい形で役割を果たしていくことが大切にされています。

それぞれが自立した存在として社会と交わり、その交わりを通して自分の輪郭を知る。関わることで、自分が受け入れられていることを知る。その実感はデンマーク人たちに限らずとも、私たちにも充足感を与え、心の支えにもなります。人とのつながりとは偶然の産物ではなく、選びとることで生まれる実りなのかもしれません。

Image: Folkehuset Absalon

Strangers Become Neighbors
他人から隣人へ

人と人とがごく自然に交わる「もう一つの食卓」として近年デンマークで注目を集めている“コミュニティ・ダイニング”。なかでも代表的なAbsalonは、朝は7時台から遅くは深夜2時まで、ほとんど隙間なくクラブ活動やレクリエーションなど多様なプログラムを催すコミュニティスペースとして機能する場所です。

かつて教会だったコペンハーゲンにある建物は、今や“みんなのリビングルーム”として毎夜毎晩、見知らぬ人たちが同じテーブルを囲む空間に。座席はスタッフの指示によりその時次第、料理はセルフサービスのため「誰が料理を取りに行くか?」「そろそろお皿を片づける?」といった小さなやりとりから必然的に会話が始まっていきます。

集まっているのは学生や移民、旅行者、友人同士や家族連れなど、経済的な事情や社会的な背景に関わらずさまざま。違う人生を生きる人たちが「誰かと食卓を共にしたい」というシンプルな思いひとつで時間を共有しています。早いときには全200席が数週間も前から予約でいっぱいになるのだそう。ほんの少しコンフォートゾーンを出て声をかけてみるその一歩の先には、思いがけない交流や想像以上のあたたかさが広がっているに違いありません。

Image: Folkehuset Absalon

Togetherness
誰かがいる幸せ

メッセージひとつで距離を縮めることも容易い今の時代。オフラインで集まるコストをかける関係性は貴重品、コミュニティは現代の贅沢品ともいえます。

同時に、多様な生き方が尊重されるようになった一方で、誰かと関わることの煩わしさから “孤独”ではなく“孤立”を選んでしまうこともしばしば。

人と関わることはときに地道で、心地よいばかりとは限りませんが、それでも自分のことを話したり、同じ時間を過ごして楽しい食卓を囲む。そんなささいな積み重ねと関係の中にこそ、私たちは生きている実感と満足を見出しているのかもしれません。

「時代に合った生き方」もあれど、いつまでも変わらないのは人とつながることの温かさであり、幸せの秘訣であることをヒュッゲの文化は教えてくれます。

Image: Folkehuset Absalon

 

 

Text: Sara Um

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Wellness can be made
幸せな人生の秘訣

Connection is a verb
つながることは動くこと

Strangers Become Neighbors
他人から隣人へ

Togetherness
誰かがいる幸せ

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